子宮頸がんの症状とは?原因や予防方法、治療方法などを詳しく解説

子宮頸がん 症状

日本国内で、毎年約1万人の女性が罹患し、約3,000人が死亡している子宮頸がんは、2000年以降患者数も死亡率も増加していることから、定期的に検査を受けている方も少なくありません。

そんな子宮頸がんは、自覚症状がほとんどありませんが、病気が進行するとさまざまな症状が現れます。

この記事では、子宮頸がんの症状、原因や予防法、治療方法などをご紹介します。

子宮頸がんについて理解を深めたい方、不安な症状がある方は、ぜひ参考にしてみてください。

子宮頸がんの症状

子宮頸がん 症状

冒頭でお伝えした通り、子宮頸がんは初期段階ではほとんど自覚症状がなく、がんが進行するにつれて以下のような症状がみられることがあります。

  • 不正出血(月経以外の出血)
  • おりものの増加、異常(茶褐色、黒褐色)
  • 性交痛
  • 下腹部痛
  • 腰痛
  • 血尿、血便
  • 排尿障害 など

子宮頸がんが進行すると、月経ではないのに出血したり、おりものの臭いや色が変化したりします。その後、骨盤内や周りの臓器にがんが広がっていくと、痛みが生じたり、血尿や血便が出たりします。

初期の子宮頸がんであれば、子宮を摘出する手術をしなくても済む可能性があるため、子宮頸がんは早期発見が重要です。

子宮頸がんとは

子宮頸がん 症状

子宮頸がんは発見が遅れると命にかかわることもある恐ろしい病気ですが、どのような病気であるか理解し、定期的に検診を受けることで重症化する前に適切な治療ができます。

ここからは、原因や予防方法について詳しくご紹介します。

子宮頚部にできるがん

胎児を守り、育てる臓器である子宮は、成人女性で全長約7cm、重さ60~70kgほどです。頸部と体部に分けられ、子宮頸がんは子宮の入り口部分にある子宮頸部に発生します。

子宮頸部は、表皮を上皮細胞が覆っています。上皮細胞には扁平上皮細胞と円柱上皮細胞(腺細胞)が存在し、子宮頸がんは扁平上皮細胞にできる扁平上皮がんと、腺細胞にできる腺がんが大多数です。

予防や早期発見に検診が有効とされている子宮頸がんですが、腺がんは子宮頸部の奥になるため、検診で発見されにくいという問題も生じています。

初期のうちは、子宮頸がんは上皮にとどまっているのですが、進行すると子宮筋、膣、骨盤、リンパ節へと転移し、さらには膀胱、直腸、肺、肝臓、骨などに転移する恐れもあります。

子宮頸がんは、20代後半から増え始め30代後半~40代がピークとなることから、若い女性が罹患する可能性のあるがんとして知られています。

子宮頸がんの原因

子宮頸がんの多くは、ヒトパピローマウイルス(HPV)の感染が原因。HPVは100種類以上の型がありますが、その中でも約14種類がハイリスクと考えられています。ハイリスクのHPVのうち、子宮頸がんの全体の70%を占めるのは16型と18型です。

HPVは、性交渉経験のある女性の過半数が感染するともいわれているほどありふれたウイルスで、皮膚や粘膜に傷がつくことで上皮細胞に入り込んで感染します。

通常は、HPVに感染しても免疫細胞によって自然に排除されますが、何かしらの理由で免疫力が低下し、ウイルスが排除されずに長期間感染している状態が持続すると、がんになる前の状態である「異形成」となり、そこからさらに数年~数十年かけて子宮頸がんに進行します。

HPVは男性にも感染するウイルスで、男性の場合は陰茎がん、肛門がん、中咽頭がんの原因になることもあります。

若い世代に子宮頸がんが増えている背景には、性交渉の若年化があるとも考えられています。また、複数の性交相手がいる場合はそれだけウイルスに感染する機会も増えることや、喫煙なども危険因子の一つといわれています。

子宮頸がんの病期(ステージ)

子宮頸がんのステージは、日本産科婦人科学会によって以下のように分類されています。

  • Ⅰ期……がんが子宮頚部にだけ存在している。肉眼的にはっきりせず垂直方向に5mmまでの病変
  • Ⅱ期……がんが子宮頸部の外に広がっているが、骨盤壁や膣の下1/3まで達しない
  • Ⅲ期……がんが子宮頸部の外に広がっていて、骨盤壁や膣の下1/3まで達する/水腎症や無機能腎の原因、骨盤や大動脈リンパ節転移を伴うもの
  • Ⅳ期……がんが小骨盤を超えて広がるか、膀胱や直腸粘膜、離れた臓器にまで広がる

ステージは日本語で病期と呼ばれ、がんの進行段階を表しています。ステージはⅠ~Ⅳ期に分類された中で、さらに細かく分けられています。

子宮内部で発生したがんが、子宮頸部の外に広がっているか、その広がり具合はどの程度かによって、ステージが診断されます。

子宮頸がんの予防方法

子宮頸がんの予防には、HPVに感染しないようワクチンを接種することで防ぐ1次予防と、がん検診による早期発見、早期治療を行う2次予防が効果的とされています。

日本国内で承認されているHPVワクチンは、2価、4価、9価の3種類で、それぞれ以下のような特徴があります。

  • 2価……16型、18型に対するワクチン
  • 4価……6型、11型、16型、18型に対するワクチン
  • 9価……6型、11型、16型、18型、31型、33型、45型、52型、58型に対するワクチン

ワクチンはすでにHPVへ感染している方に対しての効果は認められないことから、初めて性交渉を経験する前に接種することが効果的です。

日本では、2013年4月にワクチンの定期接種に指定されていたものの、接種後に体調不良を訴える方が増えたことで、積極的なワクチン接種への呼びかけは中止されていました。

しかし、厚生労働省によってワクチンの安全性および有用性を示すデータが集められたとし、2022年4月から接種の呼びかけを再開。

小学校6年生~高校1年生の年齢を対象として、公費負担によってHPVワクチンの接種が可能です。

2次予防として、自覚症状がなくても子宮頸がん検診を定期的に受けるようにしましょう。子宮頸がん検診は、20歳以上の女性を対象として大半の自治体で費用補助を受けられます。

20歳を過ぎたら、2年に1回は子宮がん検診を受けることをおすすめします。

子宮頸がんの治療方法

子宮頸がん 症状

子宮頸がんの治療は、ステージによって手術療法、放射線療法、化学療法(抗がん剤治療)が選択されます。手術といっても、初期の状態なら子宮を温存することも可能です。

ここからは、子宮頸がんの治療方法について詳しくご紹介します。

手術療法

手術療法には、子宮を残す温存手術と、子宮を切除する全摘手術があります。

がんに変異する前の「前がん病変」や、初期の子宮頸がんであれば、子宮頸部にある異常な組織のみを取り除く「円錐切除術」によって、レーザーや電気メスを用いて円錐状に病変を取り除くことが可能で、この場合は子宮を摘出しないため術後に妊娠、出産が可能です。

ただし、切り取った組織を詳しく検査した結果、進行した子宮頸がんであると判明した場合は、再度手術が必要になることもあります。

がんが子宮頸部の上皮を超えて広がっている場合は、原則子宮の摘出が必要となります。

がんの広がり方によって、子宮頸部の周りの組織を残して子宮のみを摘出する「単純子宮全摘手術」か、子宮と骨盤内のリンパ節、卵巣などを摘出する「広汎子宮全摘手術」が行われます。

Ⅰ期~Ⅰb1期までの子宮頸がんであれば、患者さんの希望を考慮して子宮を温存する手術を選択することもできますが、がんが進行している場合子宮の温存が難しいケースもあります。

放射線療法

放射線療法は、手術とほぼ同じ効果を望めると考えられていて、手術と比べると卵巣機能がなくなってしまうというデメリットがある反面、性交障害や排尿機能障害が軽いとされています。

治療は、体の外から放射線をあてる外照射と、膣内にアプリケーターという装置を入れて、子宮の中に放射線をあてる膣内照射を組み合わせて行われます。

手術療法ではなく放射線療法を希望する方もいれば、手術でがんを摘出したあとに再発防止のために行う方もいます。

外照射は25~28回、そのうち膣内照射は4~5回行い、8週間ほどで治療は終了します。

副作用として、下痢、皮膚炎、食欲不振、膀胱炎症状などが挙げられますが、時間とともに改善するとされています。放射線治療後数年してから、リンパ浮腫、骨折、直腸潰瘍、腸閉塞、腸穿孔のリスクがあるともいわれているため、治療後の生活のイメージや持病などを踏まえ、担当医とよく相談することが必要です。

化学療法

化学療法は、がん細胞を小さくする薬(抗がん剤)を用いる方法で、手術や放射線と併せて行う場合もあれば、ステージが進んでいることで手術や放射線治療が難しい患者さんに対して、がん細胞を小さくする目的で行うケースもあります。

放射線治療を単独で行うよりも、化学療法を併用したほうが生存率が高くなることも報告されていて、治療を組み合わせて行うことも多いです。

化学療法で用いる抗がん剤は、がん細胞だけではなく体の中の正常な細胞にも障害を与えてしまい、副作用として嘔吐、白血球減少、血小板減少、貧血、脱毛、しびれといった症状が出ることがあります。

治療期間は2~3ヵ月となり、その間通院や入院によって治療を続けることになります。

まとめ

子宮頸がんは、初期の段階では症状を感じられないことから、定期的に検診を行っていないと知らないうちにがんを進行させてしまうこともあります。

少しでも不安になる症状がある方は、早めに専門機関を受診することをおすすめします。

子宮頸がんは、早期発見、早期治療によって治癒率が高くなり、子宮を温存できる可能性も十分あります。一方で、がんが進行してしまうと再発率や死亡率も高くなることから、子宮頸がん検診を定期的に受ける必要があります。

岡村産科婦人科では、子宮頸がん検診、子宮体がん検診、乳がん検診など、女性特有の悪性疾患に対する検診を行っています。

また、HPVワクチンの接種も実施しております。

女性が抱えるさまざまなお悩みに対して、専門的な知識と技術をもとに治療を提案させていただきますので、不安なことがある方はぜひ岡村産科婦人科までお気軽にご連絡ください。

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