月経困難症とは?原因や治療方法を詳しく解説

月経困難症

月経は、一定年齢以上の方であれば誰もが経験するものです。月経には痛みが伴う場合があり、その度合いも一人ひとり異なります。

しかし、中には月経時の痛みが日常生活に支障をきたすまでに増加する場合があり、これを月経困難症と呼びます。

月経困難症は自然に発症する場合と何らかの疾患によって引き起こされる場合があり、誰がいつ発症してもおかしくない病気です。

この記事では、月経困難症の基本と発症原因、治療方法について詳しく解説します。月経時の痛みに悩んでいる方や違和感を感じている方は、ぜひ参考にしてください。

月経困難症とは

月経困難症

月経困難症とは、月経に伴って起こる病的な症状のことをいいます。

代表的な症状として月経時の痛みがあり、腹痛や腰痛、肛門の周囲に痛みを感じるなどさまざまです。

これらの痛みは主に月経血を子宮から排出する際に発生し、日常生活に支障が出るほどの状態を月経困難症と呼びます。

排卵を伴わない月経時は、痛みが発生しにくい傾向にあります。

また、子宮内膜症や子宮腺筋症などの合併症を発症している場合にも痛みの発生が多く見られるため注意が必要です。

日本では月経困難症に悩む方がおよそ900万人いるといわれていますが、医療機関で適切な治療を受けている方はそのうちの6%ほどしかいません。

「月経痛は我慢するもの」「市販の鎮痛薬で十分」と考える方が多いことから、このような結果になっていると考えられます。

月経困難症は何らかの病気によって引き起こされている可能性もあるため、強い痛みがある場合は医療機関の受診をおすすめします。

月経困難症の種類

月経困難症

月経困難症は、機能性月経困難症と器質性月経困難症の2つに分けられます。主な違いは原因となる疾患の有無ですが、それぞれ異なる特徴をもつため注意が必要です。

ここでは、機能性月経困難症と器質性月経困難症の特徴をそれぞれ解説します。

機能性月経困難症

発症の原因となる疾患がない場合は、機能性月経困難症と呼びます。

月経困難症と思われる方の4割以上が機能性月経困難症であり、原因となる疾患がないことから原発性月経困難症と呼ばれることもあります。

10代〜20代の方に多く、はじめて月経が来てから2年〜3年経過したころに発症する可能性が高い病気です。

発症までに時間がかかる理由としては、はじめての月経後しばらくは排卵がされない点が挙げられます。

加齢や出産とともに改善する傾向にありますが、若年で機能性月経困難症の症状が強い方は将来的に子宮内膜症になりやすいといわれています。

痛みは1日〜2日でおさまりますが、近年では10代での子宮内膜症が増加しているため油断はできません。

器質性月経困難症

発症の原因となる疾患がある場合は、器質性月経困難症と呼びます。

初めての月経から5年以上が経過してから発症する可能性があり、原因となる疾患に続いて発症することから続発性月経困難症と呼ばれることがあります。

発症の原因となる疾患は子宮内膜症、子宮腺筋症、子宮筋腫の3つが代表的です。

30代以降の方が発症するケースが多く、近年の女性のライフスタイルの変化や晩婚化の影響で器質性月経困難症が増加傾向にあります。

このことから、不妊の原因となったり月経時の生活の質の低下につながったりする場合があるため注意が必要です。

月経時の痛みが強い方や痛みを伴う排便が増えている方は、早めに医療機関を受診するようにしましょう。

機能性月経困難症の原因

月経困難症

月経困難症に悩む方の多くは機能性月経困難症を発症しています。機能性月経困難症は、発症の原因となる疾患がなく誰でも発症する可能性がある病気です。

ここでは、機能性月経困難症の原因を3つ紹介します。

プロスタグランジンの過剰分泌

プロスタグランジンとは、痛みや発熱を引き起こす生理活性脂質です。

子宮内ではがれ落ちた子宮内膜を体外へ排出する際に、子宮を収縮させるためにプロスタグランジンが分泌されます。

プロスタグランジンが過剰分泌されると、子宮が必要以上に収縮し結果的に血流を悪くしてしまうケースが多いです。

また、プロスタグランジンが血液内に入った場合は生理痛だけでなく、頭痛や吐き気を引き起こす場合もあります。

子宮口が狭い

子宮口が狭い場合、月経血をスムーズに排出できずに痛みを引き起こします。

出産経験がない方や若い方は、子宮口に加え月経血が通る子宮頚管が細くて硬い場合が多いです。

月経血がこの狭い空間を移動する際の刺激が、痛みとして現れます。

また、子宮口が狭いことから逆流した月経血が卵管を通り骨盤内に流れ込むことで、月経血に含まれるプロスタグランジンが痛みを引き起こす場合もあります。

心理的な要因

機能性月経困難症は、思い込みやストレスによって引き起こされる可能性があります。

月経時の痛みは誰しもが避けたいものです。

しかし、痛みへの恐れやマイナスイメージが強い場合、痛みの増加を招き機能性月経困難症の発症につながる場合があります。

また、ストレスが脳内のホルモンや神経伝達物質に大きく影響して痛みが引き起こされるケースもあります。

器質性月経困難症の原因

月経困難症

月経困難症は自然に発症する場合が多いですが、特定の疾患が原因で発症する場合もあります。

疾患があるにもかかわらず、医療機関を受診せずに放置してしまった場合は不妊につながるリスクがあるため注意が必要です。

ここでは、器質性月経困難症の原因となる代表的な疾患について詳しく解説します。

子宮内膜症

子宮内膜症とは、子宮以外の場所(卵巣や骨盤内)で子宮内膜に似た組織が増殖する病気のことをいいます。

病名から子宮で発生する病気と思われがちですが、子宮の外での発生が基本です。

子宮内膜は女性ホルモンに影響され月経の周期に合わせて組織が増殖します。

本来の子宮内膜は月経時の出血とともに膣を通って体の外に排出されますが、子宮内膜症で増殖した組織は子宮以外の場所にあるため、出口がありません。

そのため、増殖した組織がお腹の中に滞留したり周囲の組織と癒着をおこしたりすることで、炎症とともに強い痛みを引き起こす場合が多いです。

また、不妊の原因になり得ます。

子宮内膜症を患っている方の8割以上が月経困難症であるケースが多く、月経時の痛みが強い方は早めに医療機関を受診することをおすすめします。

子宮腺筋症

子宮腺筋症は、子宮の筋肉層に子宮内膜が潜り込むことで組織が増殖する病気です。

40代に多く見られる病気であり、子宮内膜にかかわる手術(帝王切開や筋腫など)を経験されている方や経産婦の方が発症する可能性が高い傾向にあります。

主な症状として、強い痛みと月経時の出血量の増加が代表的です。

子宮腺筋症によって増殖した組織が増えすぎてしまうと、周囲の筋肉を硬くし子宮の壁を厚くしていきます。

そのため、最終的に子宮全体の肥大化を招き強い痛みの発生につながる場合が多いです。

子宮腺筋症は女性ホルモンの一種であるエストロゲンによって増殖するため、月経がある限り進行を続けます。

女性ホルモンの分泌が減少すると同時に症状もおさまりますが、病気が治ったわけではないので注意が必要です。

子宮筋腫

子宮筋腫は、子宮の壁を形成する筋肉の一部が異常増殖をおこし、良性の腫瘍となる病気です。

発症の原因はまだ解明されておらず、子宮の筋肉内に発生した腫瘍の芽が成長することによって引き起こされる病気と考えられています。

女性ホルモンの一種であるエストロゲンの影響を受け、長い時間をかけて成長するため発見までに時間がかかる場合が多いです。

30代〜40代の方に多く見られ、女性ホルモンの分泌が減少する閉経後に腫瘍は小さくなる特徴があります。

筋腫を発症すると月経量が増えることが多いため、レバーのような血のかたまりがでてくるのは一つの判断材料となります。

命にかかわるような病気ではありませんが、痛みの増加や貧血の原因になるため注意が必要です。

月経困難症の治療方法

月経困難症

月経困難症は治療できる病気です。機能性月経困難症か器質性月経困難症によって治療方法は異なります。

ここでは、月経困難症に有効な治療方法を3つ紹介します。

鎮痛薬

鎮痛薬は、月経時の痛みの原因であるプロスタグランジンの分泌を抑える効果があります。

機能性月経困難症を発症している方の80%に有効であるといわれていて、代表的な治療方法の一つです。

痛みを感じた直後に服用することで、プロスタグランジンが過剰分泌される前に対処することができ痛みの増加を防ぎます。

痛みを我慢したうえで鎮痛薬を服用した場合は、すでにプロスタグランジンが分泌されているため鎮痛効果が得られない可能性があります。

低用量ピル

低用量ピルは避妊目的で使用されるケースが多いですが、月経困難症にも有効な治療方法として認められています。

ホルモンの一種であるプロゲスチンとエストロゲンが含まれており、妊娠中に似たような状態にします。

そのため、新たな排卵と子宮内膜の成長が抑えられ、月経時の痛みの軽減につながります。

器質性月経困難症の方に用いられることが多い治療方法であり、原因となる疾患の縮小に有効な場合があります。

漢方薬

漢方薬は、月経困難症に効果的な治療方法です。

代表的な漢方薬である当帰芍薬散(トウキシャクヤクサン)は、月経困難症の原因になり得る体の冷えや倦怠感を改善します。

また、下腹部の痛みが強い方には桂枝茯苓丸(ケイシブクリョウガン)が有効であり、骨盤の血行不良を改善し痛みを軽減します。

まとめ

この記事では、月経困難症の基本や発症原因、治療方法について解説しました。

月経困難症は、自然に発症する場合と疾患によって引き起こされる場合があります。

いずれにしても、誰が発症してもおかしくない病気であることは間違いありません。

特に器質性月経困難症の場合、原因となる疾患がすでにあり適切に治療しなければ不妊につながるリスクがあるため注意が必要です。

月経時の痛みの度合いは一人ひとり異なりますが、決して我慢しなければならないものではありません。

月経時の痛みが強い方や違和感をおぼえている方は、早めに医療機関を受診することが大切です。

『岡村産科婦人科』では、月経に関する幅広い悩みに対応します。

月経困難症はもちろん、原因となる疾患の検査と治療もお任せください。

また、不妊の悩みがある方は経験豊富なスタッフが丁寧に聞き取りを行い、解消に向けて全力でサポートします。

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