PMSとは?不快な症状を緩和するための治療法やセルフケアについて紹介
「自分でコントロールできないイライラに毎月悩まされている……」「生理前に頭痛やむくみが酷く精神的にもつらい……」これらの症状を感じたことのある女性は多く、生理前だから仕方ないと考えている方もいらっしゃいます。
しかし、毎月訪れる不快な症状は「PMS(月経前症候群)」と呼ばれる疾患の可能性があり、治療することで症状を改善できる可能性があります。
この記事では、PMSについて詳しくご紹介したあとに、治療法やセルフケアの方法を解説していきます。
毎月生理前の症状に悩まされている方、対処方法が知りたいという方は、ぜひ参考にしてみてください。
PMS(月経前症候群)について
女性なら一度は耳にしたことのあるPMSという言葉ですが、実際にどのような症状があり、何が原因で起るかわからないという方も多いのではないでしょうか?
まずは、PMSの症状や原因について、詳しくご紹介します。
PMSとは?
PMSは「Premenstual Syndrome」の略で、月経前症候群とも呼ばれています。
月経(生理)の前に起こる精神的、身体的な何らかの症状のことを言い、月経がはじまる1~2週間ほど前から症状が出はじめますが、月経がはじまるとその症状がなくなるのが特徴です。
生理前は、人によってさまざまな症状が起こりますが、その中でも日常生活に支障をきたすような強い症状がある方はPMSと診断されます。
日本では、月経のある女性の約70~80%が症状を持っていて、そのうち5.4%が生活に支障をきたすような症状に悩まされているのです。加えて、その症状に3ヵ月以上悩まされていることなどが診断の基準となります。
PMSで起こる症状の例
PMSで現れる症状は200とも300とも言われていて、人によってさまざまですが、以下のような症状が一般的です。
【精神的な症状】
- イライラする
- 気分がふさぎ込む
- 憂うつになる
- 涙が止まらなくなる
- 不安感が強くなる
- 落ち着かない
- 集中力ややる気の低下 など
【身体的な症状】
- 腹痛
- 腹部の膨張感
- 頭痛
- 腰痛
- 肌荒れ
- ニキビができる
- 胸が張る
- むくみ
- のぼせ、ほてり
- 便秘
- 眠気
- 不眠
- 疲れやすい
- 過食
- 食欲不振 など
症状の現れ方は人によって違いますが、精神的な症状として普段気にならないようなことが気になってイライラしたり、情緒不安定になったりします。また、そのような自分に対して自己嫌悪になってさらに症状が悪化するといったことも起こります。
身体的な症状としては、腹痛や腰痛、眠気、だるさなどを訴える方が多く、過食によって体重が増えてしまうことも。
生理前はしょうがないと思い我慢している方も多いPMSの症状ですが、日常生活に支障をきたすほど症状がつらい方は、一度婦人科を受診して相談してみるようにしましょう。
PMSの原因
PMSは諸外国でも広く知られている症状ですが、実ははっきりとした原因はわかっていません。しかし、卵巣から分泌されているエストロゲン(卵胞ホルモン)と、プロゲステロン(黄体ホルモン)という女性ホルモンの変化が関係しているのではないかと考えられています。
この2つの女性ホルモンは、月経周期とともに分泌量が変化していきます。女性には月経期、卵胞期、排卵期、黄体期があり、黄体期にはエストロゲンとプロゲステロンが多く分泌されます。
エストロゲンは女性らしさをつくるホルモン、プロゲステロンは妊娠を助けるホルモンと言われていますが、急激に低下することで脳内のホルモンや神経伝達物質に異常を引き起こし、PMSの原因となるのではと言われているのです。
そのほかにも、食事や生活習慣、ビタミンB6不足が関係しているとも言われていて、さまざまな要因が重なることでPMSが引き起こされます。
年齢によって変化するPMS
10代で生理が始まってから女性ホルモンの働きが安定するまで数年かかることや、45歳を過ぎて更年期に入ると生理不順になり閉経を迎えることから、性成熟期と呼ばれる妊娠に適した時期は18~45歳の間です。
一方で、PMSの症状が起こりやすいのもこの時期とされています。
また、20代では身体的な症状のみだったPMSが、30代になりライフステージが変わることで精神的な症状が顕著に表れる例もあります。
さらに、出産経験の有無もPMSに関係すると考えられていて、出産経験のある女性は精神的な症状が多く、出産経験のない女性は身体的な症状が多く見られることも。
妊娠、出産だけではなく、仕事や生活環境の変化によるストレスなどが影響し、PMSを発症すると考えられています。
PMSの治療法
PMSは女性なら誰でも経験する可能性がある症状ですが、身体的な症状も精神的な症状も、重くなることで日常生活に支障をきたすことがあるため、治療を行う方も増えています。
ここからは、PMSの治療法についてご紹介します。
症状に対する対症療法
PMSにはさまざまな症状があるのは前述の通りですが、症状が軽い方や服薬を最小限にしたい方へ、医師の判断によって症状を改善させるための対症療法が選択されることがあります。
具体的には、痛みには鎮痛剤、消化器症状には整腸剤、胃薬、下剤、むくみには利尿剤や降圧剤などを服用するといった内容です。
精神症状が強く表れている方には、抗うつ剤が使用されることや、多様な症状に対しては漢方薬が使われることもあります。
これらはドラッグストアで手に入れられるものもあり、一時的な症状の改善を目指している、症状だけを改善させて様子を見たいという方もいらっしゃいますが、できれば医師の診断を受けて処方された薬を服用することをおすすめします。
原因に対する継続療法
根本的な解決を目指したい方や症状が重い方は、低用量ピルなどによるホルモンバランスの変動抑制ができる薬を継続的に服用します。これらの薬は副作用も少なく、服用している期間のみ排卵を止めるものなので、妊娠を希望している方は服用をやめれば排卵が回復します。
ただし、現時点で妊娠を望んでいる方にはこれらの薬は使用できないため、漢方薬などが用いられることもあります。
生活習慣を整える!PMSを和らげるポイント
PMSの治療は、薬を服用するだけではなく生活習慣を整えることも重要なポイントとなります。ここからは、PMSを和らげるために日常生活で気を付けるべきことをご紹介します。
生理周期やPMSの症状を記録して把握する
いつも決まった周期で体調の変化が起こると感じる方は、まず自分の生理周期やどのような症状が現れているか記録して自分の状態を把握するようにしましょう。
前述したように、女性ホルモンは黄体期に分泌量が多くなり急激に低下するため、黄体期を知ることでリズムを整えることができ、症状を予測できるようになります。
今では、生理周期アプリなどを使用すると簡単に自分の状態を記録できるため、PMSに悩まされている方はまず記録を始めてみましょう。
ある程度、症状が現れる時期がわかれば無理な予定を入れないようにしたり、事前に備えることができたりすることで、気持ちに余裕が生まれます。
軽い運動をする
PMSを改善させるためには、軽い有酸素運動が効果的と言われています。ウォーキングや軽いストレッチなど、簡単な運動で体をじっくりと温め、代謝や血流を良くすることがポイントです。
運動を続けることで自律神経が整い、リフレッシュ効果も期待できます。
また、骨盤を整える体操やストレッチもおすすめです。骨盤が歪んでいると、周囲の血流が滞り卵巣機能が低下することで、ホルモンバランスが乱れると言われているため、骨盤の歪みを解消させてホルモンバランスを安定させましょう。
適度な運動はPMSを改善させるだけではなく、ダイエットや健康維持にも役立ちます。もともと運動する習慣がない方は、無理のない範囲でウォーキングをしたり、日常生活の中で階段を使用するようにしたりしながら少しずつ取り入れていくようにしましょう。
バランスの良い食事をとる
食事をとらなかったり、偏食が多かったりすることで、ホルモンバランスが乱れる原因となるため、バランスの良い食事をとるようにしましょう。
とくに、血糖値を急に上昇させるような甘い食べ物は要注意。食べすぎると血糖値が急上昇後に急降下することで、イライラや過食が増えると言われています。
また、バランスの良い食事をとることはもちろんですが、ゆっくり噛んで食べる、小分けにして食事をとるなど食事方法の見直しも重要。
血糖値をゆっくり上げる複合炭水化物(穀物類、豆類、いも類など)を積極的に食べたり、イライラを抑えるビタミンB6、カルシウム、マグネシウムを摂取したりして、乱れた食生活を改善させましょう。
カフェイン、アルコール、喫煙を控える
食事習慣を見直すとともに、カフェインやアルコールの摂取、喫煙習慣についても見直す必要があります。
カフェインやアルコールは、PMSを悪化させる可能性があるため、重い症状に悩まされている方は過剰に摂取しすぎている可能性があります。どちらも適量であれば問題ないケースもありますが、過度にカフェインやアルコールを摂取している方は注意が必要です。
また、喫煙は血の巡りを悪くし、全身にいきわたる血液を減少させ、身体が冷えやすくなることや、自律神経のバランスが崩れることからPMSを悪化させる原因になります。PMSの症状が重くて悩んでいるという方は、禁煙することが望ましいでしょう。
ストレスを和らげる方法を知る
ストレスによってPMSの症状は強くなるとされているため、月経前はとくにストレスを溜めないようリラックスと休息を心がけましょう。
睡眠をしっかりとり、ストレスを和らげる方法を知っておくことが重要です。
人によって適した睡眠時間は異なりますが、一般的には約7時間の睡眠が理想的と言われています。就寝前にスマホやテレビを見ないようにしたり、寝室の環境を整えたりして、良質な睡眠をとることを心がけましょう。
また、リラックス効果やホルモンバランスを整える効果のあるアロマテラピーを取り入れたり、半身浴をしたりして、休む時間を大切にしましょう。
まとめ
PMSは、症状が重くなると自分ひとりでは抱えきれなくなり、家族や職場の同僚に迷惑をかけてしまうという罪悪感から、ふさぎ込む原因にもなります。
毎月定期的に症状を感じる方は、自分の症状や周期を把握して対策をとるようにしましょう。
また、一人で悩まず専門医に相談することで、気持ちが楽になることもあります。婦人科では薬の処方だけではなく、日常生活へのアドバイスなども行っているため、PMSの症状がつらいと感じる方は、まずは専門医に相談してみることをおすすめします。
岡村産科婦人科では、地域に密着した医療を心がけるとともに、各診療科に専門医が在籍し、豊富な実績と知識によって、こまやかな診察と充実したサービス・ケアを提供しています。
PMSにお悩みの方は、専門的な視点から患者さまをサポートする岡村産科婦人科まで、ぜひご相談ください。